消費者金融や銀行など現在ではさまざまな金融機関からカードローン商品が登場しており、誰でも利用しやすいイメージが定着してきました。
一方でカードローンを利用している両親や親族が死亡した場合、カードローンの借金がどうなるのか不安な方も多いのではないでしょうか。
負債であるカードローンの借入金は、債務者が死亡してしまえば借金がクリアになってしまうと思っている方もいるかもしれませんね。
しかしこれは大きな間違いで、カードローンの借入金も「負の資産」として相続の対象になってしまいます。
多額の借金がある債務者の相続をしなければならない人にとっては大きな問題ですが、カードローンの借金は相続放棄を行うことも可能です。
そこで今回は、カードローンの借金を相続放棄する方法や負債の相続を回避する方法について詳しく説明していきます。
■カードローンの負債は相続される!
カードローンの契約者が死亡した場合、資産の他にカードローンの負債に関しても相続されます。
1. そもそも相続とは?
そもそも相続とは、被相続人が残された相続人に財産や負債、権利などを包括的に承継することをいいます。
ちなみに遺産を持っている人(死亡者)を「被相続人」といい、遺産を伝承される人を「相続人」といいます。
2. 相続はプラスではなく、マイナスになることも
このように相続とは、必ずしも財産や権利などプラスになるもののみを承継するものではなく、負債がある場合にはその負債も承継することになります。
たとえば、相続人(本人)の父親がカードローンを利用しており200万円の利用残高がある状態で死亡すると、相続人にそのまま負債200万円が引き継がれ、借金を背負うことになります。
しかし、他に貯金や資産などが300万円分あった場合には「資産300万円−負債200万円=遺産+100万円」ということになります。
よって、財産の相続は資産も負債も包括的に確認してからでないと、返済義務が発生するなど後々のリスクが高まる可能性があるのです。
3. 包括的にプラスならば相続の価値ありだが、マイナスなら想像区方法を選ぼう
「カードローンに多額の負債があるが、同時に財産(不動産や貯金など)が負債を上回るほどある」
そんな場合には、相続を承認してもプラスに働く可能性が高いでしょう。
しかし負債を財産で相殺しようとしてもマイナスが上回っている場合には、相続方法をしっかり選ぶことで負債を背負うことを回避できます。
■カードローンの相続方法は3つ!
親や家族などが死亡した場合の財産や負債を相続するのかしないのか、意思表示を行う方法は以下の3つです。
- 単純承認
- 限定承認
- 相続放棄
それでは、1つずつ詳しく見ていきましょう。
1. 単純承認
相続するのかしないのかを意思表示する方法として、相続するという意思表示には2つの方法があります。
その「相続する」という意思表示の2つの方法のうちの1つが「単純承認」です。
単純承認とは、簡単にいってしまえば原則通りに相続をするという行為であり、被相続人の全ての権利や義務を無限に承継することになります。
よってプラスの財産を受け継ぐことができますが、同時にマイナスの財産も受け継がなければなりません。
●単純承認は手続き不要!?
単純承認は他の2つの意思表示とは異なり、特別な手続きを行わなくても自動的に単純承認をしたものとみなされる場合があります。
これは法定単純承認という制度があるためで、相続開始を知った時から3ヶ月が経過すると手続きを行わなくても単純承認をしたことになるという制度です。
あえて単純承認の意思表示を行う場合もありますが、単純承認を行いたい場合には相続開始を知ってから3ヶ月が過ぎれば自動的に承認されたことになります。
逆にいうとこの3ヶ月が経過してしまえば、他の承認方法への変更や相続放棄はできなくなり支払い義務が発生します。
被相続人がカードローンなどで負債がある場合には、できるだけ早めに財産を調査し何かしらの意思表示を行うことが大切です。
2. 限定承認
単純承認と同様に、相続するという意思表示をするためのもう一つの方法が「限定承認」です。
被相続人の全てを受け入れるという単純承認とは違い、限定承認は負債などのマイナスを差し引いてもなおプラスの財産が余っていれば、それを相続するという留保をつける方法です。
限定承認を行うと、まずはプラスの相続財産の中から債権者に対しての弁済が行われることになります。
そして弁済を行なったあとでもプラスの財産が残っていた場合のみ、相続人が承継することになるのです。
被相続人の財産がプラスの財産が多いのか、マイナスの財産が多いのかがわからないという場合に有効に利用できる手段です。
●限定承認には手続きが必要!
一定期間が経過すれば自動的に承認される単純承認とは違い、限定承認は相続人が手続きをおこなう必要があります。
限定承認を行う方法としては、相続開始を知った時から3ヶ月以内に家庭裁判所に行き限定承認の申述をし、審判をしてもらう必要があります。
この手続きを行わない場合には、単純承認の時に説明した法定単純承認が成立してしまうので、それ以降に限定承認をすることはできません。
ちなみに相続開始を知った時からの3ヶ月間を「熟慮期間」といい、この期間は家庭裁判所に申述をすることで伸長することも可能です。
限定承認を検討しているが熟慮期間を過ぎてしまいそうな場合には、家庭裁判所にて伸長の申述をしておくことをおすすめします。
3. 相続放棄
これまで「相続をする」という意思表示である単純承認と、「条件を満たせば相続する」という意思表示である限定承認について説明しました。
そして3つめの意思表示の方法となるのが、「相続しない」という意思表示である相続放棄です。
相続放棄は、法定相続人となった場合に被相続人の残した財産が、プラスであってもマイナスであっても相続をしないことになります。
そのため被相続人の財産が明らかにマイナスである場合などに行う意思表示となっています。
●相続放棄には手続きが必要!
限定承認と同様に相続放棄には、手続きが必要です。
手続きの方法は、自分が相続人になったことを知った時から3ヶ月以内に家庭裁判所にて「相続放棄申述書」を提出する必要があります。
家庭裁判所にこの申述が承認されれば、「相続放棄申述受理通知書」が交付されて手続きが完了となるのです。
また、相続人になった時から3ヶ月以内に家庭裁判所にて「相続放棄のための申述期間延長」を申請すれば、期間を延長してもらえる場合もあります。
4. 被相続人の財産の状況によって手続き方法を選択しよう
このように「単純承認」「限定承認」「相続放棄」という3つの意思表示方法が存在しますが、被相続人の財産の状況によって選択する手続きを変える必要があります。
| プラスの財産がある場合 | マイナスの財産がある場合 | |
| 単純承認 | 受け取る | 受け取る |
| 限定承認 | 受け取る | 受け取らない(受け取る前に弁済される) |
| 相続放棄 | 受け取らない | 受け取らない |
■相続放棄を行う場合の注意点は?
3つの相続に関する意思表示の中で、被相続人の財産を一切相続しないという意思表示が「相続放棄」ですが、手続きを行うためにはいくつかの注意点があります。
1. 相続放棄をしたからといって財産が消滅するわけではない
先ほど相続放棄をするためには、自分が相続人になった時から3ヶ月以内に家庭裁判所に申述を行う必要があるという説明をしました。
そして家庭裁判所から「相続放棄申述受理通知書」が交付されれば、相続放棄が完了となります。
しかし、法定相続人が財産の相続放棄を行なったからといって、被相続人の財産が消滅するわけではありません。
もしも法定相続人が相続放棄をした場合には、次の順位に当たる人が法定相続人になります。
●相続人の順位に注意
カードローンを利用している契約者本人が死亡した場合、妻や夫などの配偶者は常に相続人となり、配偶者の他には順位というものがあります。
相続人の相続順位とは、以下のように法律で定められています。
- 第一順位:直系卑属
- 第二順位:直系尊属
- 第三順位:兄弟姉妹・姪甥
第一順位である直系卑属とは、被相続人よりも下の世代の血族のことを指します。
たとえば本人に息子や娘がいる場合には、第一順位である直系卑属に当たりますので配偶者以外の相続人の中で最も優先順位が高いのは本人の子供です。
第二順位である直系尊族とは、被相続人よりも上の世代の血族のことを指し、本人の父母などがこれにあたります。
被相続人に直系卑属がいない場合には、その両親などである直系尊属が相続人となります。
第三順位とは、被相続人の兄弟姉妹や姪甥のことです。
直系卑属も直系尊属もいない場合には、兄弟姉妹や甥姪が相続人となります。
2. 相続放棄を行うと相続人がスライドしていく
相続人の順位について説明してきましたが、相続放棄を行なった場合この相続人の順番で財産の相続人がスライドしていくことになります。
たとえば自分の父親が財産を残してなくなった場合、まず法定相続人になるのは父親の配偶者である母親です。
しかし母親が相続放棄をした場合、相続人は第一順位者の自分へとスライドします。
そして自分が相続を放棄した場合には、父親の両親である本人の祖母や祖父が法定相続人となります。
さらに祖父母が相続放棄をした場合でも、次は第三順位である父親の兄弟などが相続人として権利がスライドして行きます。
そして、自分が法定相続人だと知った時から3ヶ月以上放置してしまえば、単純承認が成立し、財産を相続する必要が出てきてしまいます。
もしも被相続人の財産がマイナスの場合、個人だけではなく財産がスライドする可能性のある血族が全員相続放棄を行わないと、血族の中で誰かがマイナスを被る危険性があるのです。
3. 被相続人の財産は親族での話し合いが重要
このように相続放棄をすると、順位にならって相続人がスライドして行きます。
そのため相続放棄の手続きを行なった場合には、親族など相続人としての権利がスライドしてくる可能性のある人に相続放棄を行なった旨を伝えておく必要があります。
これは、相続人がスライドしていった結果、相続放棄を知らされないままに3ヶ月が経過し、気がついたら多額の借金を背負っていたという危険性があるためです。
自分の相続放棄の手続きが完了したら、必ず法定相続人になる可能性のある人々に、相続放棄をしたことをしっかり伝えるようにしましょう。
4. 保証人になっている場合には弁済の義務が発生することも
カードローンは保証人不要でも借り入れできる所が多いため、滅多にないことですが、ローンの連帯保証人になっている場合には、返済の義務を放棄することができません。
これは相続とは違い連帯保証人としての義務が発生しますので、弁済の義務が発生します。
■どうして住宅ローンの負債は相続されないのにカードローンの負債は相続されるの?
これまで説明してきたように、カードローン利用者が死亡すると、相続人にその負債分が相続されることになります。
しかし、同じローン商品である住宅ローンの場合には、たとえローンが残っていたとしても、その負債分はチャラになってしまうことがあります。
これは住宅ローンを利用する時に加入する「団体信用生命保険」が大きく関係しています。
1. 団体信用生命保険とは?
団体信用生命保険とは、通称「団信」とも呼ばれている多くの住宅ローンで加入を義務付けられている生命保険です。
万が一契約者が死亡したり、高度障害などで返済が難しくなった場合でも、借り入れの残高分だけ保険金が下りるので、死亡後に借金が残ることがないのです。
2. カードローンには団体信用保険がない
一方のカードローンには、利用の時に団体信用生命保険に加入することを義務付けていません。
そのためカードローンは借り入れをしたまま利用者が死亡してしまうと、そのまま借金が財産として残ってしまうのです。
カードローンは利用者の死亡でチャラにはならないので、しっかりと法定相続人が意思表示を行うことが重要です。
ただ、スルガ銀行カードローンのように「消費者信用団体生命保険」に無料で加入できるカードローンもあります。
スルガ銀行カードローンの場合は、ガン保障特約付きなので、ガンと診断されたときもカードローンの返済が不要になります。
参考:スルガ銀行カードローンのメリット、デメリットを徹底検証
■まとめ
今回はカードローンの借金を相続放棄する方法や、相続の意思表示のしくみや注意点などに関して説明してきました。
相続の意思表示を行う時に一番重要になるのは、期間内に手続きをしっかり完了させておくということです。
手続きを先延ばしにすると、気がついた時には相続を自動的に受けなければならない状況に陥る危険性もあります。
また、財産は相続放棄をすれば消滅するわけではありません。
自分の手続きが終わった場合でも、親族への配慮も忘れず相続放棄の旨を伝えるようにしましょう。